韓国留学中、KBSで見た―韓国社会に広がる高齢化の影

韓国好きの皆さんは韓国社会が日本と同じように高齢化しているのを具体的に知ってますか?この記事は私が韓国留学中にテレビで知った韓国社会の老齢化について、具体的に紹介したものです。

実は私は韓国留学中、キャンパス以外にも韓国人と接する機会を意識的に多く持ちました。それでも知ることの出来ない韓国社会の現実があることを知ったのはKBSのテレビ番組からでした。

きっかけは韓国留学中のテレビ番組から

韓国留学中の冬休みの韓国語特別授業も終わり、少し肩の力を抜いていたある日、下宿でKBSを見ていたら、韓国の高齢化にまつわる話が続けて紹介されていました。

韓国の山に登ったり、区主催の文化教室に参加したり、キャンパス以外の韓国留学生活の中では知ることが出来なかった、韓国社会の一断面として、ここに書き留めておこうと思います。

増え続ける黄昏離婚

番組によれば、황혼이혼(黄昏離婚)、つまり長年連れ添った夫婦の熟年離婚が、この20年で大きく増えているとのことでした。単身家庭の3分の1は60歳以上の高齢者が占めているとも言っていました。

背景にあるのは、韓国女性の意識の変化のようです。長年の不満を抱えたまま夫と生き続けるより、たとえ生活が苦しくても、一人で自分らしく生きる方を選ぶ女性が増えているというのです。

そう言えば、私の下宿のおばさんも、子供はいるのに、旦那さんの姿を一度も見たことがありませんでした。理由を詳しく聞いたことはありませんが、テレビの向こうの話ではなく、案外身近なところにもある現実なのかもしれない、とその時思いました。

老骨に鞭打って働く60代男性

一方で、番組は韓国の高齢男性が置かれている厳しい状況にも触れていました。年金だけでは生活が成り立たず、60代男性の就業率が、20代の就業率よりも高いというのです。離婚のショック、孤独、そして肉体的な疲労という三重苦を背負いながら働き続けなければならない60代男性が多い、とのことでした。

その話を聞いてから、街で見かける高齢の労働者の姿が、少し違って見えるようになりました。ある時、道端で栗を焼いて売っている高齢の男性に出会い、写真を撮らせてもらえないか尋ねたところ、「上手く撮ってくれよ」と快く応じてくれました。その笑顔の裏に、番組で聞いたような苦労があるのかどうか、私には分かりません。ただ、韓国の街角で、こうして懸命に働く高齢者の姿を何度も見かけたのは事実です。

一方で、外出のついでや自転車で街を散策している時など、地下鉄の地上出口で物乞いをしている高齢の男性を見かけることも、一度や二度ではありませんでした。見た目には特に健康を害している様子もなく、それでもそこに座り続けている姿が印象に残りました。それを見ると、意外にも足を止めて施しをする通行人が少なくありませんでした。まだ働ける人、働くことさえ難しくなった人。同じ高齢者でも、その差は思いのほか大きいのかもしれません。

下宿のおばさんに聞いた話では、近くの教会で朝6時から、誰でも利用できる無料の朝食を提供しているとのことでした。下宿で朝食が出ない日曜日にでも行ってみようかと思いましたが、つい、コンビニで朝食を買うのに慣れ、行きそびれてしまいました。今思えば、行ってみるべきだったと思います。

あれから10年余り、今の韓国

この記事を書くにあたり、あれから月日が経った今の韓国はどうなっているのか、あらためて調べてみました。すると、2025年9月、韓国で60代の雇用率が20代の雇用率を上回るという逆転現象が起きたというニュースが見つかりました。コロナ禍の時期を除けば、統計を取り始めて以来、初めてのことだそうです。

背景には、新卒より経験者を求める採用の風潮や、大企業・製造業での採用減少により就職が難しくなった若者たちと、引退しても生活費が足りず、生活のために働かざるを得ない60代、という、世代間の対照的な事情があるようです。留学中にテレビで見たあの話は、一時的な社会現象ではなく、その後も続き、むしろ強まっている流れだったのだと知りました。

一方、20代の若者たちも

高齢者ばかりが苦労しているわけではありません。韓国の20代の間では、삼포(三放棄)という言葉が長く使われています。恋愛、結婚、出産という3つを諦める、あるいは先送りにする世代、という意味だそうです。不安定な雇用や高い住宅価格など、生きていく上でのコストの高さが、その背景にあると言われています。

高齢世代は離婚と孤独と疲労の三重苦を、若い世代は恋愛と結婚と出産を諦める生き方を、それぞれ抱えている。世代は違っても、どこか閉塞感でつながっているように感じられるのは、私だけでしょうか。

留学中、テレビを通して、キャンパスの外に広がるこうした韓国社会の姿にも触れられたことは、どちらかというと、余裕のある韓国人とばかり接していた私には、貴重な経験だったと思います。

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