韓国留学して驚いたことは、街に日本語を教える학원(ハグォン、学院)が多いことでした。この記事はそれについてと、韓国で習っていた書道教室での日々を綴っています。
留学する時の一番不安なことは言葉の問題ではないでしょうか。果たして自分の言葉が通じるだろうか?でも、韓国留学の場合、その心配は要りません。日本語を学ぶ韓国人は思いのほか多いのです。
街で気づいた、言葉の壁の低さ
韓国の大学で日本語を学ぶ学生が多いことは、留学前から知っていました。しかし、実際に街に出てみると、「日語塾」という看板の多さに気づかされました。韓国人向けの日本語塾です。中国語、漢字学習の次に、日本語を教える塾が多いようでした。韓国では、こうした施設を학원(ハグォン、学院)と呼び、学校の授業の補習や大学受験対策、資格取得、さらには音楽やスポーツなどの習い事を行う、日本でいう「塾」や「予備校」「民間スクール」のことを言います。 国としてどのような政策があるのかまでは知りません。
これは、単なる印象ではないようです。国際交流基金が2025年に発表した調査によると、韓国の日本語学習者数は約55万人にのぼり、前回調査から2割近く増加して、世界で3番目に多い国となっています。日本語を教える教師の数も、中国に次いで世界2位です。学習者の多くは、中学校・高校などで第二外国語の授業で日本語を学んでいるとのことで、若いうちから日本語に触れる機会が、韓国では比較的多いようです。
要するに、韓国へ留学する場合、日本語を話せる韓国人が多いということです。これは、他の国へ留学する場合との大きな違いだと思います。実際、この後お話しする書道教室でも、日本語で声をかけてくださる場面がありました。
書道教室、緊張の初日
朝、食事を終えてから、10時からの書道教室へ向かいました。教室には男は私一人。背の高い、細めの中年女性が先生でした。手ぶらで行った私に、新しい筆を出し、水道の水でほぐしてくれました。
授業は、基礎の基礎から始まりました。最初の1時間は、縦と横の線を書くだけ。これが、私にとっては意外と難しいものでした。先生のように、滑らかには書けません。終わりには、筆を逆方向に、あるいは回して、折れた筆先をまっすぐに整えなければなりませんでした。
次は、ハングルの書き方です。この日は「가 거 고 구 카 커 코 쿠」を練習しました。縦と横の位置のバランスは、1/2、あるいは1/3にすると良いと教えてもらいました。もちろん、説明はすべて韓国語です。私が分からない言葉があると、先生は筆で漢字を書いて教えてくれました。基本は、日本の書道とそう変わらないと思います。まさに、60の手習いでした。
この日が初日だった女性と、一番前の席で一緒に練習しました。私の紙の余白がなくなると、新しい紙を分けてくれました。後ろの方に座っていた女性たちは、世間話ばかりしていて、練習をしているのかどうか分からないほどでした。
そんな中、私の前に来た一人の女性が、こう尋ねてきました。「独島(ドクト 竹島)は韓国の土地か、日本の土地か」。正直なところ、その時はあまり深く考えず、「日本の土地だ」と答えてしまいました。すると、「そんなことを言ったらだめだ、独島は韓国の土地だ」というようなことを、強い調子で言い返されました。韓国に来てから、そういったことを言われたのはこれが初めてで、少し驚きました。次回のために、返事をよく考えておこうと思いました。アジュンマ(おばさん)は怖い、というのが正直な感想でした。
11時半になり、先生に「授業があるので」と伝えて帰ろうとした時、私の記事が載っている大学新聞を渡しました。下手な自己紹介よりも、これを見てもらった方がいいだろうと思ったのです。帰りかけたところで、先生に呼び止められ、行くと筆と墨汁、紙を渡され、「毎日1回書くように」と言われました。その時、女性たちは私の渡した新聞を、山なりになって覗き込んでいました。最後は、みんな笑顔で送り出してくれました。
二日目、新聞と褒め言葉
10時に、また書道教室へ向かいました。この日は、私の他にも男性が二人いました。女性がコーヒーを出してくれたので、それをゆっくり飲んでから書き始めました。
先生が新しいお手本を書いてくれた時、日本語で「菅野さん、素晴らしい」と声をかけてくれました。「ありがとうございます」と答えたものの、これはもちろん書道の腕前ではなく、おそらく、先週渡した新聞の、私の記事を見て言ってくれたのでしょう。
帰り際、カラオケ教室でも一緒になる女性から、「明日もカラオケ教室へ来るのか」と聞かれました。帰り際に、教室の皆から一斉に注目されるのが、少し照れくさく感じられました。
大学で若い学生たちと過ごすのは嫌いではありませんが、やはり同年輩の人たちと一緒にいると、どこか心落ち着くものがあります。
三日目、少しずつ縮まる距離
この日は自転車がパンクしていたので、歩いて書道教室へ向かいました。先生に「書道はおもしろいか」と聞かれたので、「おもしろいです」と答え、続けて「カラオケ教室はおもしろいか」とも聞かれたので、「書道よりおもしろいです」と答えました。
先生は、私がカラオケ教室にも通っていることをすでに知っていて、「愛唱歌は何か」と尋ねてきました。「신사동 그 사람(新沙洞の人)」と答えると、先生は「주현미(チュ・ヒョンミ)の歌だね」とすぐに言い当てました。次に「사랑의 인사(愛の挨拶)」と言うと、さすがにこちらは誰も知りませんでした。それもそのはず、これは若い世代のグループ、Seeyaの歌です。「歌ってみろ」と言われたので、一小節だけ歌ってみせました。
こうして、少しずつ、教室の皆さんとの距離が縮まっていくのを感じました。

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