韓国留学中、自転車屋アジョッシと秋の食卓

韓国好きの皆さんは、韓国の人と接する機会が多いことと思います。この記事は私の韓国留学中に気がついた異文化体験を少しばかり綴ったものです。

異文化の中にも、街の人と触れ合うことで、人間的な喜怒哀楽は一緒だと思ったこともありました。外国語何するものぞ、結局はハートが大事だ。それがシニア留学で私が学んだことでした。

自転車屋のアジョッシ

1週間ほど前、愛用の自転車の後輪ブレーキが、タイヤとの接触部分の部品が外れて効かなくなっていました。部品はすぐに拾ったものの、忙しさにかまけて、そのまま乗り続けていました。

この日、昼食を済ませてから、自分で直せないかと試してみましたが、他の部品やネジがないとどうにもならないことが分かり、以前世話になった自転車屋へ向かうことにしました。幸い、店は開いていました。

店のアジョッシ(おじさん)は、すぐに新しい部品を取り出して直してくれました。お金を払おうとしても、いらないと言います。手を合わせて感謝の意を伝えると、アジョッシは嬉しそうな顔で、「気を付けて行けよ」と送り出してくれました。本当に自転車が好きな人なのだろうと思いました。

その日の夕食の時、下宿のおばさんにこの話をすると、近くには他にも自転車屋があるけれど、そこの店主はいつも仏頂面で、あのアジョッシはいつも笑顔だと教えてくれました。おばさんの子供が小さい頃、三輪車を買おうとした時も、やはりお金を受け取ろうとしなかったそうです。

コンビニのおじさんとの掛け合い

毎日のようにビールやコーヒーを買いに行くコンビニに、経営者と思われる、なぜか気の合うおじさんがいます。京東市場のことを教えてくれたのも、この人でした。

いつも何かと声をかけてくれます。「昨日はよく眠れたか」「何を勉強しているのか」「日本に奥さんはいるのか」といった具合です。

先日は、「勉強は順調か」と聞かれたので、「年を取っているから疲れる」と答えると、「そりゃ、そうだ」と返され、二人でおかしくなって笑いこけてしまいました。

京東市場、その本当の大きさ

コンビニからの帰り道、京東市場が近かったので、また吸い込まれるように足を踏み入れてしまいました。驚いたことに、この市場の規模は、想像していたよりもはるかに大きいのです。

以前見ていたのは、恐らく表通りだけで、全体の10分の1程度に過ぎなかったのでしょう。表通りから何本も横に入口があり、そこを入っていくと、また縦に市場が広がっています。幅3メートルほどの通路の中央には、品物を乗せた台が並び、人一人がやっと歩けるほどの賑わいでした。

この日も、また珍しいものを目にしました。まず、以前街で見かけた、うじ虫のようなものの正体が分かりました。蚕でした。

炒めたものは小さく見えましたが、生きて動いているものを見ると、思いのほか大きいのです。乾燥させて箱に入れられたものも売られていました。一体どんな味がするのか気になりますが、進んで食べたいとは思いませんでした。

次に、アジュモニ(おばさん)が枝豆の皮を剥いているところに出くわしました。日本のような、鮮やかな黄緑色の豆ではありません。ほとんどが赤紫や青紫、中には黒っぽいものもあり、日本でおなじみの黄緑色の豆は、たまにしか見当たりませんでした。

秋の食卓、里芋とトラジ

ある朝、スープの中に、ミニトマトほどの大きさの、薄茶色の丸いものが入っていました。きのこかと思って食べてみると、里芋だと分かりました。

下宿のおばさんに、もっと大きいものは食べないのかと聞いてみましたが、不思議そうな顔をされてしまいました。これが韓国の里芋なのだと思い直し、秋の味を楽しむことにしました。

また別の日の夕食では、白くて小さな、朝鮮人参のようなものが食卓に上がりました。下宿のおばさんに尋ねると、トラジ(桔梗)だと言います。

「アリラン」の次に有名だという民謡にも歌われるトラジ。日本で言えば、秋の七草の一つでもあります。韓国では、桔梗の根は薬用にも食用にも使われるのだそうです。歯ごたえがあり、なかなかの味でした。

それと、毎日食卓に出されものに、初めて見た時はシソの葉だと思った、えごまの葉の漬物があります。私にはどうしても見分けがつきませんでした。

形は似てますが全く別物で、えごまの葉は種から「えごま油」を採るために栽培されてきた植物で、韓国では葉を食べる文化として発達したものだそうです。

食文化を始め、最初は戸惑うことばかりの留学生活でしたが、住んでいるうちに、少しずつ慣れていくものです。そうやって一つ一つ知っていくことも、留学の楽しみの一つでした。

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