韓国ドラマ「サンド(商道)」でサンオクとタニョンの結ばれない恋愛を観た韓ドラファンは切ない思いになったことでしょう。この記事ではキム・ヒョンジュが演じたヒロイン、タニョンの魅力とその切なさを徹底解剖してみました。
この記事により、タニョンの切なさとなっている朝鮮時代の女性の弱い立場。それにも関わらずサンオクを想い続けたタニョンの、葛藤や悲しみを知ることが出来ます。まずタニョン役のキム・ヒョンジュがどういう女優だったかを見てみましょう。
韓国ドラマ「サンド(商道)」のタニョン役キム・ヒョンジュとは
韓国ドラマ「サンド(商道)」でタニョン役を演じたのは1977年生まれの女優キム・ヒョンジュ(김혐주)でした。「サンド」放送当時はまだ24歳の若手でしたが高校在学中にモデルとして活躍していました。身長168cm、年齢は日本式に数えると今年49歳になりますが、未婚だそうです。
その後1997年ドラマ「私が生きる理由」でドラマデビューしたと言われています。もともと現代劇で活躍していましたが、韓国ドラマ「サンド(商道)」は初の時代劇出演でした。ヒョンジュは「時代劇はしない」と固辞していましたが、イ・ビョンフン監督の熱烈なラブコールにより出演を決意したそうです。
ヒョンジュは監督の要求する、毅然とした女性のタニョン役のため、芯のある深みのある中低音のセリフ、一言一言を正確かつ感情豊かに届ける発声が求められましたが、監督の徹底的な指導により聡明で深い悲しみを持つタニョン役を見事に演じ切り、高い評価を得ました。
韓国ドラマ「サンド(商道)」のタニョンという女性の性格
キム・ヒョンジュ演じるタニョンとはどんな女性だったのか、もう少し詳しく見てみましょう。
タニョンは商団・松商(ソンサン)の大行首(リーダー)で父パク・チュミョン(大房)の娘であり、商団の後継者として修行中でした。そして敵対する商団・湾商(マンサン)の若者に過ぎなかったサンオクの商才を見抜き、彼に通訳を依頼します。これが最初の出会いでしたが、互いに「恋心」を抱きながらも最後まで一緒になれませんでした。
タニョンは「金こそ全て」という父の哲学に反発し、サンオクの「人を大切する商い」の哲学にひそかに共鳴していました。サンオクの周りには、妻となる湾商のボスの娘ミグム、両班の娘である旅芸人チェヨンという女性たちもいましたが、タニョンは誰よりもサンオクを商人として、人間として深く理解していました。
「サンド(商道)」は商人のドラマですが、タニョンは単なるヒロインを超える存在で、サンオクとの関係は最後まで描かれます。タニョンはサンオクにとって理想のパートナーですが、「互いに好き合っているのに一緒になれない」それを「言葉にしない感情」で豊かに表現する。その抑圧された演技こそタニョンを演じたキム・ヒョンジュの魅力です。
韓国ドラマ「サンド(商道)」タニョン役キム・ヒョンジュの容姿と佇まい
朝鮮時代の衣装をまとったキム・ヒョンジュの美しさは、役柄を象徴する清廉で凛としたタニョン像にぴったりと重なっています。
・すらりとした外見
質素ながらも品格のある朝鮮の衣装が良く似合うすらりとした体型は気品があり美しい。朝鮮最大の商団松商の後継者として、商人の世界を力強く生きる聡明な女性にふさわしい姿です。
・大きい目と少し厚めの唇
キム・ヒョンジユの大きい目と少し厚めの唇は、タニョンの「言葉に出来ない感情」を語ります。サンオクを見つめる眼差しには、ライバルへの敬意と共に言葉にならない想いがこもっています。
・媚びない立ち姿
その真っすぐな背筋で女性指導者としての威厳をたもっています。サンオクの前に立つ時もライバル商団の相手として決して媚びず、自分の感情を表に出さず、商人として接し続けます。
・微妙な表情の変化
あくまで松商を率いる大行首として強がっていても、サンオクの前では表情がわずかに揺れる時があります。キム・ヒョンジュはタニョンの心の葛藤を繊細に表現した演技で視聴者の心をつかんだのです。
「サンド(商道)」が放送された2001年のキム・ヒョンジュは若さに溢れ、それに深みのある演技が加わり輝きを放っていました。
韓国ドラマ「サンド(商道)」タニョンとサンオクの因縁
韓国ドラマ「サンド(商道)」のタニョンとサンオクの因縁を始まりから結末までを簡単にまとめてみました。
・悪縁
サンオクは清国の帰り、荷の中に禁制品の硫黄を見つけるが、タニョンの父、パク・チュミョンによりサンオク親子は濡れ衣を着せられる。サンオクの父は処刑されが、サンオクはからくも逃れ奴婢に落とされ奴隷となります。タニョン親子とサンオクの関係はこのような悪縁から始まりました。
・真実の告白
山寺でタニョンと再会したサンオクが自分の想いを伝えると、タニョンは自分はチュミョンの娘ではなく、亡くなった息子の嫁であることを伝える。サンオクがタニョンと一緒になることは難しいと悟ったこの場面で、二人の愛の行く末が困難なことを意味していました。
・結ばれない不条理
タニョンがサンオクに惹かれれば惹かれるほど、サンオクとタニョンの父チュミョンの確執は深まるのですが、「恋愛がお互い好き合っているのに人生を共に歩めず本当に切なく辛かった」という感想が今も絶えません(出典:Filmarks)。「パートナーが様々な事情によって結ばれない」その不条理が視聴者の胸をうちます。
・結末
悪縁で始まったタニョン親子とサンオクですが、最後では郡守になったサンオクが、謀反人を助けた罪で官婢に下げられたタニョンと、投獄されたチュミョンを助けます。彼女はサンオクの「商道の鏡」でありながら、ドラマでは最も切ない恋を生きた女性でもありました。
タニョンはサンオクにとって求めても得られない永遠の女性であり、タニョンは結ばれないゆえのその眼差しに宿った切ない想いは、最後まで言葉にならなかったのです。
韓国ドラマ「サンド(商道)」のタニョンの切なさ解剖
それでは最後にタニョンの切なさを解剖してみたいと思います。
タニョンとサンオクが結ばれなかったのは、一言でいうと朝鮮時代の女性の再婚が事実上禁止されていたためです。それを江戸時代の女性と比べてみるとタニョンの切なさが良く分かります。
朝鮮時代の女性
・事実上の再婚禁止
朝鮮時代には直接に女性の再婚を禁止する法律は存在しませんでしたが、その代わり、「再嫁(さいか)した女性の子孫を官職に就かせない」という事実上の再婚禁止・制限を行う法令(再婚禁止法)がありました(出典:東京外国語大学学術リポジトリ)。
・社会的・法的なペナルティ
儒教で国家を統治した朝鮮時代では、再婚した女性やその子孫は社会的に厳しい差別を受け、両班(貴族階級)の身分であれば家系図(族譜)からも除外されることもありました。これにより特に上流階級の女性は事実上再婚できなくなりました(出典:東京外国語大学学術リポジトリ)。
・夫亡き後も「嫁いだ家」の人間
「嫁ぐとその家の人間にならなければいけない」という観念が朝鮮社会を支配しており夫が早く死んでも、再婚したり実家に帰ったりすることもできませんでした。タニョンはまさにこのケースで、チュミョンがタニョンを娘として、後継者として扱ったのもそのためでした。
このように、朝鮮時代には再婚自体を禁じるのではなく、「再婚すると子供の将来を閉ざす」という強力な社会制度を作ることで女性の再婚をコントロールしていました。
江戸時代の女性
江戸時代では夫の死亡の場合。寡婦(未亡人)は再婚に法的は制約はありませんでしたが、身分によって事情は異なりました。
・庶民の場合
再婚はごく自然なことで、生活のためにむしろ奨励される面もありました。
・武家の場合
武家では「七去(しちきょ)」という離婚条件があり女性の立場は庶民より弱かったものの、寡婦の再婚をそのものを禁じる法律はなく、家の存続のために再婚が認められることも多くありました。
タニョンが江戸時代の日本の女性だったなら、夫を亡くした後にサンオクと結ばれることは法的にも社会的にも十分あり得た話でした。朝鮮の儒教的制度がいかに女性(タニョン)を縛っていたか、江戸時代との比較でより鮮明になりますよね。

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